ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションとは、障害のある人もない人も、年齢や性別、病気の有無などに関係なく、誰もが地域社会の中で「当たり前の生活」を送れるようにしようという考え方です。
特別な場所に分けて生活させるのではなく、同じ地域で暮らし、学び、働き、余暇を楽しむことができる社会を目指す理念として、福祉の分野を中心に広く使われています。
この言葉は「特別にすること」ではなく、「普通の生活を保障すること」を大切にしている点が特徴です。
ノーマライゼーションの考え方が生まれた背景には、障害のある人が長い間、施設や病院などに隔離され、社会から切り離されてきた歴史があります。
障害があるという理由だけで、地域で暮らすことや働くこと、社会に参加することが制限されてきた状況に対し、「それは本当に自然なことなのか」という問いから、この理念が広がっていきました。
障害があるから特別扱いするのではなく、障害があっても地域で普通に暮らせるように、社会の仕組みや環境を整えることこそが大切だと考えられるようになったのです。
ノーマライゼーションが目指す「当たり前の生活」とは、たとえば自分の住みたい場所で暮らし、家族や友人と関わりながら生活することです。
学校に通い、仕事をし、休日には趣味や外出を楽しむといった、誰にとっても自然な日常が含まれます。
障害のある人にとっても、こうした生活は本来望まれるものであり、その実現を妨げているのは障害そのものよりも、社会の側にある壁や仕組みであると考えます。
そのため、ノーマライゼーションでは、個人を変えようとするのではなく、社会のあり方を見直すことが重視されます。
具体的には、段差をなくすバリアフリー化や、誰でも使いやすいトイレや公共交通機関の整備、情報を分かりやすく伝える工夫などが挙げられます。
また、働く場では、業務内容の調整や柔軟な働き方を取り入れることで、障害のある人も力を発揮できる環境を整えることが求められます。
これらは障害者だけのための特別な対応ではなく、高齢者や子育て中の人、けがをしている人など、多くの人にとって暮らしやすい社会づくりにもつながっています。
ノーマライゼーションは福祉サービスの考え方にも大きな影響を与えています。
施設中心の支援から、地域で生活を支える支援へと方向転換が進められ、グループホームや在宅支援、就労支援などが充実してきました。
これにより、障害のある人が自分の意思で生活を選び、地域の一員として暮らせる機会が広がっています。
支援する側も「守る」「管理する」という姿勢から、「共に生きる」「支え合う」という姿勢へと変化してきています。
また、ノーマライゼーションは障害のある人だけの問題ではありません。
誰もが人生のどこかで病気やけが、高齢などによって支援を必要とする可能性があります。
そのときに、特別な存在として扱われるのではなく、自然に支え合える社会であることは、すべての人にとって安心につながります。
つまり、ノーマライゼーションは「障害者のための考え方」ではなく、「誰もが生きやすい社会をつくるための考え方」といえるのです。
このように、ノーマライゼーションとは、違いを排除するのではなく、違いがあっても共に生きられる社会を目指す理念です。
一人ひとりの尊厳を大切にし、当たり前の生活を当たり前に送れる社会を実現するための土台となる考え方であり、これからの共生社会を支える重要なキーワードといえるでしょう。