職業リハビリテーションを実施している施設や機関は、障害のある人が働く力を身につけ、職場に安心して復帰できるように支援するために、それぞれ異なる役割を担っています。

こうした支援は一つの機関だけで完結するものではなく、医療、福祉、教育、雇用といった幅広い分野が連携しながら行われています。

そのため、本人の状況に合わせて利用できる場所がいくつかあり、それぞれが職業に関する評価や訓練、就労準備、職場への定着支援などを行っています。

 

もっとも中心的な役割を担っているのが「地域障害者職業センター」です。

ここは職業リハビリテーションの専門機関として、職業カウンセリングや作業能力の評価、職業準備訓練、職場実習の調整などを総合的に行います。

専門のカウンセラーが本人の適性や希望を丁寧に聞き取り、どのような仕事が向いているかを一緒に探しながら、必要なスキルを身につけるための訓練プログラムを提供します。

また、職場適応援助者（ジョブコーチ）を派遣して、働き始めた後の職場定着支援も行うため、長く仕事を続けたい人にとって重要な支援拠点となっています。

 

一方、「ハローワーク（公共職業安定所）」も就労支援の大きな柱になっています。

ハローワークでは職業紹介や求人の案内をするだけでなく、障害者専門の相談窓口を設けており、働きたい人の希望や条件を踏まえた上で求人を探したり、応募書類の書き方や面接の練習をサポートしたりしています。

また、ハローワークは企業とのつながりも強いため、障害者雇用を考える企業に助言を行い、採用後のミスマッチを減らすための環境づくりにも力を入れています。

このように、ハローワークは職業リハビリテーションにおける「入口」と「出口」の両方で支援を行う役割を果たしています。

 

就労に向けた基礎づくりをサポートする場としては、「就労移行支援事業所」もあります。

ここでは、働くための基礎的なスキルを身につける訓練が行われており、体調管理の方法、生活リズムの安定、コミュニケーションの練習、パソコン訓練、職場体験などを通じて、段階的に就職を目指します。

就労移行支援は一般企業への就職を目標としているため、本人の希望する職種に合わせて訓練内容を調整し、就職活動のサポートまで一貫して行うのが特徴です。

また、就職後のフォローアップも行われるため、働き始めた後に困ったことがあっても相談しやすい環境が整っています。

 

さらに、医療機関も職業リハビリテーションに関わる重要な存在です。

特にリハビリテーション病院や精神科病院では、退院後の社会復帰を見据えた職業訓練や作業療法が行われることがあります。

医師や作業療法士と連携しながら、体力の回復や精神状態の安定を目指し、そのうえで働くために必要な力を取り戻す支援が行われます。

医療機関は本人の心身の状態を把握できるため、職業リハビリテーション全体の計画にも大きく関わり、他の支援機関と協力しながら安全な働き方を考えていきます。

 

また、福祉施設も地域での職業リハビリテーションを支える大切な存在です。

就労継続支援A型やB型の事業所では、働く場を用意しながら、実際の作業を通して働く力を育てます。

A型では雇用契約を結び、安定した環境で働く経験を積むことができ、B型では体調や特性に合わせて無理なく働くことができるため、就労のハードルを下げる役割を果たしています。

ここでの経験は一般企業への就職を目指す人にとっても、長く地域で働き続けたい人にとっても大きな支えとなります。

 

このように、職業リハビリテーションを実施している機関は多く、それぞれが役割を分担しながら本人の希望に沿った就労支援を行っています。

どの機関を利用するかは一人ひとりの状況によって異なりますが、複数の機関が連携して支援することで、本人がより安心して、無理なく働くための道筋をつくることができます。

働く力を高め、社会とのつながりを取り戻すための総合的な取り組みが、こうした多様な機関の協力によって成り立っているのです。