障害者雇用とは?
●障害者雇用とは?
障害者雇用とは、身体障害や知的障害などをもつ障害のある方ひとり一人の特性に合わせた働き方ができるように、企業や自治体などが障害のある方を雇用する制度のことです。
この制度は「障害者雇用率制度」として障害者雇用促進法に規定されており、民間企業の従業員が43.5人以上いる場合、少なくとも1人以上の障害者を雇用しなければなりません。
公的機関も同様に、障害者雇用率の基準が設けられています。そのため、事業主や公的機関は「障害者雇用枠」として障害のある人々のための特別な採用枠を設けています。
障害のある人々は通常、就業機会を得るのが難しい傾向があります。しかし、実際には彼らも多様な能力を持っており、職場での貢献ができる場面が多く存在します。そのため、自立と社会参加を促進するために、通常の労働市場とは別に、障害者専用の雇用仕組みが整備されています。
障害者雇用制度の中では、障害者は原則として障害者手帳を持っている方として定義されています。
以前は知的障害と身体障害の人々が主要な対象でしたが、2018年4月に「障害者雇用促進法」が改正され、精神障害者の雇用を義務付ける措置や法定雇用率の引き上げ、短時間労働者の計算方法の変更など、障害のある人々が自分らしい働き方を実珸するための環境整備が進められました。
そのため企業や自治体は、従業員のうち決まった割合で障害のある方を雇用することや、障害のある方への差別の禁止、合理的配慮を提供することなどが義務付けられています。
●障害者雇用の対象者
障害者雇用は原則として自治体から発行された「障害者手帳」を所持している方が対象となります。障害者手帳を持っていなければ企業の障害者雇用枠ではなく、一般枠の求人に応募する必要があります。
障害の種類ごとに手帳も異なり、障害者手帳には「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」「療育手帳」(自治体によって名称は異なります)の3種類があります。
※発達障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳の対象となることがあります。
また、障害者手帳を持っている場合は、障害者雇用の求人にしか応募できないというわけではなく、一般求人と障害者雇用の求人の両方に応募することができます。
障害のある人々が求職活動を行うための主要な方法は、以下の3つです。
まず、就職情報を提供する企業やハローワークなどの人材紹介機関を活用する方法があります。次に、民間企業や自治体などが提供する採用情報を掲載しているウェブサイトから求人に応募する手段があります。そして、障害者を対象とした企業説明会や共同企業説明会に参加することも選択できます。
●障害者雇用と一般雇用の違い
障害者雇用も一般雇用も、採用試験を受けて採用されるのは同じですが、選考段階で確認しておくことや入社後の扱いは異なります。
障害者雇用の場合は採用の段階で障害特性を伝えることで、入職後はその特性への配慮をしてもらいやすくなります。
通院や休憩などへの融通も効きやすく、職場環境の改善やコミュニケーションしやすい場の構築、業務支援など、働きやすい環境が多いようです。
障害者手帳を所持していても、一般求人での雇用も可能ですが、定着率を比較すると、障害者枠での雇用の方が一般求人での雇用よりも1年後の定着率が高い傾向があります。
障害を開示した障害者雇用の場合、定着率は約70.4%に達し、一方、障害を開示しない一般雇用の場合、定着率はわずか30.8%です。このように、障害者雇用と一般雇用では、障害のある人々の定着率に約2倍以上の差があることが示されています。
一方、通常の雇用(一緒雇用)と比べると、障害者雇用枠での求人は件数が少なく、職務内容についても限定されていることが多いため、自分が希望する仕事に就くのが難しい状況です。また、職種は限定的になりがちで、スキルアップがしづらいことから、一般雇用に比べて給与が低く設定されている傾向にあります。
障害の有無を企業に開示せずに雇用することを「クローズ就労」と呼び、これは一般の雇用枠に該当します。一方、「オープン就労」とは、障害の有無を企業に開示して雇用するケースを指します。そして、「障害者雇用枠」とは、障害者手帳を保有している人々が対象の雇用枠です。
・クローズ就労(一般雇用枠)・・・障害のあることを開示せずに就職
・オープン就労(一般雇用枠)・・・障害のあることを開示して就職
・障害者雇用枠・・・障害者手帳を持っている人が対象
上記の3つの違いは、自身の障害の有無を企業側に伝えるかどうかが主なポイントとなっています。
障害の有無は就職時に企業側に必ず伝える義務はないため、障害者手帳を持っている人でも一般雇用枠で働くことは可能です。
障害のある人にとってクローズ就労は、障害者雇用の求人に比べて一般雇用の求人の方が、求人数が多いため希望の職種を選びやすくなります。しかし、障害のことを開示せずに就労しているため、障害によって働きづらい状況にあっても会社や職場、同僚に配慮を求めることができません。
また、会社に障害があることを隠して働かなければならないため、精神的に大きなストレスを感じることになる場合があります。
●障害者雇用で働くことのまとめ
障害者雇用は、障害者手帳を所持する個人が利用できる雇用枠であり、障害のある人々が多様な働き方を選択できるようにする制度です。
この制度は、障害の有無に関係なく、個人の希望や能力に応じて、社会参加を実現できる共生社会を構築する一環として設けられています。
障害の開示は個人の意志に委ねられており、義務ではありません。それぞれの人が自身の障害についてどれだけ情報を提供するかは、個人の選択によるものです。
障害者雇用は、希望する働き方を見つけるためのさまざまなオプションを提供しており、それぞれの選択にはメリットとデメリットが存在します。
障害者雇用を通じて、障害のある人々に幅広いチャンスとサポートを提供し、彼らが自分らしい働き方を実現できるようにするものです。
障害のある人々が、自身の能力や抱える障害に合わせて最適なキャリアパスを選択し、充実感ある働き方を楽しむことができるためのものなのです。