障害者雇用促進法とは?
障害者雇用促進法とは、障害のある人がその能力を活かして働く機会を保障し、社会の一員として自立した生活を営むことを目的として制定された法律です。
正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」であり、1960年に制定されて以降、社会状況や障害者を取り巻く環境の変化に合わせて何度も改正が行われてきました。
この法律は、障害者が安心して働ける環境を整備するための基本的な枠組みを定め、企業や行政に対して具体的な義務や取り組みを求めている点が大きな特徴です。
この法律の中心となる仕組みが「法定雇用率制度」です。
これは、一定規模以上の企業や国・地方公共団体に対して、従業員全体に占める障害者の割合を一定以上にするよう義務づける制度で、障害者の雇用機会を実質的に確保する役割を果たしています。
法定雇用率は経済情勢や障害者の就労状況を踏まえて段階的に引き上げられており、民間企業では現在2.5%(今後さらに引き上げ予定)、国や地方公共団体では2.6%、教育委員会などは2.5%と設定されています。
これにより、企業は雇用する労働者の数に応じて障害者を一定数雇用する義務を負い、達成できない場合には「障害者雇用納付金」を納める必要があります。
一方で、法定雇用率を上回る雇用を実現している企業には「調整金」や「報奨金」が支給される仕組みもあり、企業が積極的に障害者雇用を推進する動機づけとなっています。
また、障害者雇用促進法は、単に雇用人数の確保を求めるだけでなく、雇用された障害者が職場で長く働き続けられるようにするための環境整備も重視しています。
その一環として「合理的配慮の提供義務」が2016年の改正で明確に規定されました。
合理的配慮とは、障害者が他の労働者と平等に働く機会を得るために、過重な負担にならない範囲で職場環境や業務内容を調整する取り組みを指します。
例えば、車椅子利用者のためのバリアフリー化、視覚障害者への点字資料や音声ソフトの提供、発達障害者に対する業務指示方法の工夫などがこれにあたります。
企業は障害者からの申し出に応じてこうした配慮を検討し、提供する責務を負っています。
さらに、障害者雇用促進法では、障害者雇用に関する差別禁止も規定されています。
これは、障害を理由として採用時に不利な扱いをしたり、昇進や配置転換の機会を制限したりすることを禁止するものです。
雇用における平等の確保は、障害者が安心して働ける職場づくりに不可欠であり、差別禁止と合理的配慮は法律の両輪として位置づけられています。
また、障害者職業生活相談員の選任や職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援制度、就労継続支援や職業訓練といった関連施策も法律に基づいて推進され、障害者の就労を多面的に支える体制が整えられています。
障害者雇用促進法の対象となる障害の範囲は、身体障害者や知的障害者に加え、2006年の改正以降は精神障害者も法定雇用率の算定対象に含まれるようになりました。
これにより、うつ病や統合失調症、発達障害などを抱える人々にも就労機会が広がり、企業の障害者雇用の在り方が多様化しています。
さらに、雇用義務の対象となる事業主の範囲も拡大され、かつては従業員56人以上の企業に限られていたものが、現在では43.5人以上(2026年度からは40人以上に引き下げ予定)へと拡大されるなど、より多くの企業が障害者雇用に取り組む必要が生じています。
このように、障害者雇用促進法は、障害者の雇用を数値的に確保するだけでなく、職場環境の改善、差別禁止、合理的配慮の提供などを通じて、障害者が自らの能力を発揮し、長く働き続けられる社会の実現を目指しています。
企業にとっても、この法律は単なる義務ではなく、多様な人材を受け入れることで組織を活性化させ、社会的責任を果たす重要な契機となります。
障害者が安心して働ける社会を築くために、障害者雇用促進法は今後も時代に合わせて改正が進められ、より実効性の高い制度として発展していくことが期待されています。