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障害者福祉における「高次脳機能障害」とは?

コラム

 

高次脳機能障害とは、事故や病気などによって脳に損傷を受けたことにより、記憶や注意、思考、判断、感情のコントロール、社会的な行動などに影響が出る障害です。

これは脳の器質的な損傷が原因であり、外見には変化が見られないために、周囲から理解されにくいという特徴があります。

代表的な原因には、交通事故による脳外傷、脳卒中、脳炎、低酸素脳症などが挙げられ、これらの影響で脳の前頭葉や側頭葉などが損傷されることで、さまざまな認知機能や行動面の障害が現れます。

 

この障害の特徴としてまず挙げられるのが、記憶障害です。

新しいことを覚えるのが難しくなったり、過去の記憶があいまいになったりします。

また、注意障害も多く見られ、集中力が続かなかったり、複数の作業を同時に行うことが困難になります。

さらに、判断力や計画性の低下も見られ、日常生活において適切な判断を下せなかったり、段取りを立てて行動することが難しくなったりします。

そのほか、感情のコントロールがうまくいかず、怒りっぽくなったり、気分の浮き沈みが激しくなることもあります。

 

また、社会的な行動に支障をきたすこともあります。

例えば、相手の気持ちを理解したり、場の空気を読むといった対人関係に必要なスキルが低下し、以前は問題なくできていた人間関係においてトラブルが生じやすくなります。

このような障害は、本人の性格の問題と誤解されがちで、家族や職場の同僚など周囲の人たちが変化に気づいても、それをどう受け止めたらよいのか分からないということもあります。

その結果、本人は社会的に孤立しやすく、精神的な不調を併発するケースも少なくありません。

 

障害の程度や症状は人それぞれ異なり、全体像がつかみにくいという点も、高次脳機能障害の支援を難しくしている要因のひとつです。

見た目に障害が分かりにくいために、周囲からの理解が得られにくいという課題があります。

そのため、障害の特性について正しく理解し、適切な配慮や支援を提供することが求められます。

具体的には、記憶の補助としてメモやスマートフォンなどを活用すること、環境を整えて注意を向けやすくすること、行動を支援するためにスケジュールや手順を明確にすることなどが有効です。

 

障害者福祉業界では、このような高次脳機能障害のある方々に対して、日常生活や就労支援、社会参加を促すための取り組みが行われています。

例えば、就労移行支援や就労継続支援事業所などでは、本人の特性を把握した上で、無理のない範囲で仕事の訓練や実習を行い、自立や社会復帰を支援しています。

また、専門の相談員や医療機関と連携しながら、本人の困りごとや家族の不安に丁寧に対応していく体制づくりが重要とされています。

 

さらに、地域全体で理解と支援の輪を広げていくことも不可欠です。

行政機関や教育機関、医療機関、福祉サービス事業所などが連携して、障害のある方が安心して暮らせる社会を築くことが求められます。

高次脳機能障害は決して稀な障害ではなく、誰にでも起こり得るものであるからこそ、その特性を社会全体で理解し、支える仕組みを整えていくことが今後ますます重要になっていくといえるでしょう。

 

 

 

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